翻刻
丈高く黒雲の如く八里が間に打上りたり死する
人弐千余人たま〳〵死を逃れし者とも静に成
りて家に帰り見れハ家財不残流失□と身
□□に成嘆き悲しむ漸親類知者の人竹木
を持来り家居をしつらひ雨風を凌けるに又
海上鳴れ□り津波打来りて牛馬壱疋も不残溺
死両度に死する人三千弐百余人房州之地震両
国之人死四千八百余人と訴
一江戸の地震夫より更に止事なく尤最初のこと
くハ成りけれ共一時の内に二度三度或は静成
る時は一時二時に一度ゆりける内夜もねる事あ
たわす表へ小屋を懸け又は上へしふ紙なと張
畳を敷諸人安堵ならす斯為二三日ゆりける間
神田明神山王芝神明所々にて湯花をさゝけ祈
けるに重てゆり返し可有少又ハ幾日頃毎度に十
倍してゆり又ハ泥の海になるのと色々霊説を云
ふらし例之江戸の事なれは世上様々の風説鹿
島の要石三尺計り抜出たりなますねかへりを
打たるゆへ大地震ゆり候又近日寝かへりを打用
心せよと鹿島かつけ也と諸人さわきしこそ
おかしけれ又大地震の時分水桶ぬかみそ桶な
と臺処へ打かへり庭へ一面にこほれ打まけけ
る所へ主人家来あわてさわきはたしにて飛
んて出ぬかみその中へ飛込のふ悲しや世界
泥の海に成たりとさけふも有実やとふ漬
の大根なと足えさわれハうなきか魚かと疑