翻刻
ひおかしかりし事共なり
一然るに廿九日酉之刻ゟ小石川水戸の御屋敷
ゟ俄に出火し大広間へもへ上り猛火天をこ
かす宵の程ハ風なく静かなりしか戌ノ刻ゟ風
烈敷片時に御茶の水え吹出し松平筑後
守石川備中守三宅備前守牧野周防守本多弥
兵衛聖堂を限り本郷町々丸山の寺院御寺町
之方は春木町ゟ本郷三丁めへ出丸山本妙寺の
方ゟももへひろかり松平加賀守同大蔵大輔同
飛騨守本多中務大輔等屋敷〳〵不残類焼
神田明神下建部内匠頭酒井隼人堀左京
藤□□新居伊織初明神之社迠一朝之煙
りとなり畢ぬ聖堂の余煙筋違橋之内外へ
廻り太田摂津守本多能登守松浦内蔵介町は須田
町ゟ日本橋江戸橋四日市青物町材木町小網町茅場
町霊厳寺在家町々北新堀より深川へ押通り海辺迠
本郷之方は湯嶋ゟ池之端へ焼ぬけ永井能登守板倉
頼母榊原式部大輔其外町々焼払ひ黒門前井上筑
後守立木伊勢守旗下屋敷〳〵上野は残り下谷通
小笠原右近将監本庄安芸守近藤備中守安
藤長門守藤堂大学頭同備前守宗對馬守水野
隼人佐竹右京大夫太田原頼母石川主殿頭内
籐式部少輔大関弾正福原内匠戸田淡路守其
外旗本屋敷〳〵四方八方へふきちらし江戸中一面
に火になるかとおそろしく老若男女火に包まれ煙
に巻れ死する物数を知らす逃行先々焼ふさかり行