翻刻!九州大学の書物たち

コレクション: 漂流記コレクション

南漂記 - 翻刻

南漂記 - ページ 6

ページ: 6

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【右丁】     西山小村 明(あく)れバ霜月廿一日天氣 朗(ほがら)かに時候(じせつ)よりハ至(いたつ)て暖氣(だんき)にて 霜霧(しもきり)のさわりもなく陸奥(みちのく)などの氣候(きこう)とハ大ひにちがひ し様子(やうす)ゆへ扠(さて)は南海(なんかい)のはてならんとめい〳〵心におもひ けり斯(かく)て四方(よも)を見渡(みわたし)ても海上(かいしやう)に塵(ちり)一本も見得バ了■ 此 邊(へん)のこらず赤土(あかつち)の泥海(とろうみ)にていかゞ成行ことなるぞと先(まつ)粥(かゆ) を煑(に)て食事(しよくじ)をなし居(ゐ)けるが水主(すいしゆ)の内源三郎 風音(ふと)向ふ を指(ゆび)ざし海上(かいしやう)遥(はるか)にみゆるハ舟にてハ有まじきやといふ にぞ我(われ)も〳〵と延(のび)上り遠目(とふめ)得(とく)と見渡(みわた)せバ小舩(こふね)壱艘(いつそう) 【左丁】 棹(さほ)さしてこなたの方へよせくる躰(てい)此時の悦(よろこ)びハ咄(はな)しにも又 語(かた)られず夫(それ)よりだん〳〵に三四町も近附(ちかづき)候ゆへ只(たゞ)両(りやう)□を上(あけ) て十六人とも助呉(たすけくれ)候へと呼(よバ)わり〳〵高聲(こうしやう)にのゝしるにぞ舩ハ 次第(しだい)に近附(ちかづき)て半町斗向ふまで漕寄(こきよせ)けるゆへいよ〳〵聲(こゑ)を はかりに招(まねき)しが十六人とも髪(かみ)もおとろになり面躰(めんてい)方は れふくれ其上 姿(すかた)の見苦(みくる)しきにや寄(よ)せ来(く)る舟ハ俄(にわか)に 元(もと)へ引返(ひきかへ)さんと櫓(ろ)を取直(とりなを)し舟をまハさんとせしゆへ□ 紙(をり)に認(したゝめ)し送(おく)り手形(てかた)を高(たか)くさし出しひろげ見せ手 を合(あハ)せ泣(なき)かなしむの真似(まね)をせしゆへに漸(やう〳〵)合点(がてん)せし様子