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【右丁】
小家(しようか)といへとも三十五十ヅヽも用意(よふい)をなし日暮(ひくれ)時より
大道(だいとう)の灯燈(ちやうちん)また家内(かない)の瑠璃燈(るりとう)へ火をてんじ候得者
一度にかざり有 硝子(ひいどろ)へ火うつり繪書(ゑがき)し花(はな)は露(つゆ)をふく
み鳥(とり)はその儘(まゝ)生(いけ)るかごとく光(ひか)りかゝやく其 風情(ふせい)何に譬(たとへ)
るものなしまた一町ごとに八尺斗も有 太鼓(たいこ)をたゝき立
家(いへ)の内(うち)には三味線(さみせん)こきうを引(ひき)小詩(こうた)やうのことをうたひ
酒肴(さけさかな)に美(び)を尽(つく)し客(きやく)をもてなす賑(にぎ)はひは筆(ふて)にも詞(ことは)
にも語(かた)りつくされず四日とも町内を毎夜(まいよ)暮時(くれとき)より
幾度(いくたび)も見廻(みまは)り〳〵あきれ帰(かへ)りて旅宿(りよしゆく)へもとり通辞(つうし)
【左丁】
に向(むか)ひ此 祭礼(さいれい)は何神(なにかみ)を祭(まつ)ることと尋(たづね)けれは此 神事(しんし)は
関帝(くわんてい)勇(いくさ)の祭禮にて毎夜(まいよ)見物(けんぶつ)郡集(くんじゆ)なすは今年の
祭(まつり)に當(あた)らぬ町々(てう〳〵)よりかざり方を見に来る者(もの)どもなり
と一月ばかりの逗留(とうりう)に珍(めづら)しき神㕝(じんじ)に会(あい)はなしの種(たね)
となりにけり
中華(もろこし)にて神(かみ)と云(いふ)は
關帝(くはんてい)菩薩(ぼさつ) 大道(たいどう)公《割書:衣冠(いくわん)の形(かたち)也|》
諸葛武侯(しよかつぶこう) 張天師(てうてんし)
姥媽神(ろうまのしん)《割書:舩玉の神也|》