翻刻!九州大学の書物たち

コレクション: 漂流記コレクション

南漂記 - 翻刻

南漂記 - ページ 89

ページ: 89

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【右丁】     可有物 心(こゝろ)爰(こゝ)にあらざればみれどもつゝのごとく聞(きけ)ども其(その)答(こた)へ なし喰(くら)ふにも食(しよく)とぼしく心気(しんき)おとろふるに付 迷(まよ) ひを生(せう)じ中華(から)も日本(やまと)も是等(これら)の徒(やから)幾人(いくたり)と言(いふ)その数(かす) をしらず廣東(かんとう)にある内 神㕝前(しんじまへ)に男の幅廣(はゝひろ)き六寸 ばかりも有 女帯(をんなおび)をなし惣髪(そうがみ)にてうしろへ髪(かみ)をさげ し事二尺余も有 異風(いふう)の人 織物(をりもの)の着(き)もの裾(すそ)ながく 着(き)て一人の供(とも)を連(つれ)東より西へ通るを表(おもて)より見(み)し時は 此地(このち)の風俗(ふうそく)珍敷(めつらしき)躰(なり)格好(かつこう)何人なるやと通辞(つうじ)にとへは 【左丁】 それは日本の山伏(やまぶし)と同(おな)じことにて祈祷者(きとうじや)なり此国 巫(み) 女(こ)覡男(かんなぎ)山伏(やまぶし)のごときのもの殊外(ことのほか)多(をお)し病家(びやうか)狐(きつね)つき地(ち) まつりなどに歩行(あるき)布施(ふせ)をもらい世渡(よわた)りの業(わざ)となす者(もの) なり此国にてもあらぬ事を心にかけかりそめにも彼等(かれら) を頼(たの)み手(て)のすじ八卦(はつけい)醫者(いしや)の差圖(さしづ)方角(ほうがく)がへ等(とう)に多(をゝ)くの 金銭をとらるゝもの沢山(たくさん)なりとはなしを聞(きゝ)唐(から)も日本(やまと) も大平(たいへい)の御世(みよ)なる故(ゆへ)とこたへけり又 神㕝(じんじ)のせつ辻々(つち〳〵)に 平生(へいせい)とちがひ立賣商(たちうりあきな)ひも相休(あひやす)み廣々(ひろ〴〵)と明(あき)し跡(あと)へ 破(やぶ)れし物(もの)を身(み)にまとひむしろをかぶりいるもあり