翻刻
【右丁】
【上段】
にてもおめずして【注①】
しとやかに書(かき)なし
たるはいと気高(けたか)く
見(み)ゆるもの也 上(かみ)にも
下(しも)つかたにも此道 拙(つたな)
きは不 自由(じゆう)なるのみ
か其身(そのみ)も賤(いやし)くしな
くだるものにて凡
我(われ)人(ひと)の用(よう)に立(たち)なん
物(もの)は第一 鳥(とり)の跡(あと)也
と或(ある)文(ふみ)にも見(み)え
【下段】
一人の妻(つま)と成ては其家を
よく保(たもつ)へし妻の行あしく放(ほう)
らつなれは家を破(やぶり)万事(ばんじ)つゞ
まやか【注②】にして費(ついへ)を作(なす)へからず衣(い)
服(ふく)飲食(のみくい)なとも身の分限(ふんげん)に
随用ておごる事なかれ
一若時は夫の親類 友達(ともだち)下
【左丁】
【上段】
候まゝ常(つね)〴〵御稽(ごけい)
古(こ)有(ある)こと又 大和(やまと)
歌(うた)は男女(をとこをんな)の中(なか)をも
やはらげたけき
武士(ものゝふ)のこゝろをも
なぐさむると有(あれ)は
日頃(ひごろ)心がけ詠給(よみたま)ふ
べく候 唯(たゞ)男も女も
義(ぎ)につけて身持(みもち)
心づかひ肝要(かんよう)にて
候 能(よき)上(うへ)にもよき
【下段】
部(べ)等の若(わかき)男(をとこ) ̄ニは打とけたる物
語(がたり)を付へからず男女の隔(へだて)を固(かたく)
すへしいかなる用有《割書:共|》若男 ̄ニ
文(ふみ)などかよはすべからず
一 身(み)の荘(かざり)も衣裳(いしやう)の染色(そめいろ)模(も)
様(やう)なとも目に立(たゝ)ぬやう ̄ニすべ
し身と衣服(いふく)とのよごれず
【注① 「おめず」は「怖む(おむ)」(きおくれする、おじけづく)の否定形か】
【注② 「す」とされたところは、「ま」には見えにくいですが。文意から「倹(つづま)やか」と思われます。「倹約するさま。控え目で慎み深いさま。」の意です。】