翻刻
【右丁】
【上段】
情(なさけ)をかけ給(たま)ひおもて
は唯(たゞ)青柳(あをやぎ)の糸(いと)の
靡(なひく)か如([こ]と)く物(もの)やはらか
にして人(ひと)の心(こゝろ)を酌(くみ)て
知(し)り我(わか)僻(ひか)めるを押(おし)
直(なほ)し扨又(さてまた)心の内(うち)は
石(いし)や金(かね)よりも堅(かた)く
あだなる方(かた)に心(こゝろ)を向(むけ)
給ふべからず忠臣(ちうしん)は
二君(じくん)に仕(つか)へず貞女(ていぢよ)は
両夫(りやうふ)に見(まみ)えずくれ
【下段】
われ人 ̄ニまさり皃(かほ)なるは皆(みな)女
の道(みち)に違(たがへ)る也 女(をんな)は唯(たゞ)和順(やはらぎしたがひ)て
貞心(ていしん)に情深(なさけふかく)静成(しつかなる)を善(よし)とす
一 女子(によし)は稚時(いとけなきとき)より男女(をとこをんな)の別(わかち)
を正(たゞ)しくして仮初(かりそめ)にもたわ
むれたる事を見(み)聞(きか)しむべ
からず古(いにしへ)の礼(れい)に男女(なんによ)は席(しきもの)を
【左丁】
【上段】
〴〵此(この)理(ことは)りを朝夕(あさゆふ)心(こゝろ)
にかけ給(たま)はゞ神(かみ)や仏(ほとけ)
の守(まも)りめもおはし
ましまいらせ候
【下段】
同(をなじく)せず衣 裳(しやう)をも同處(をなじところ)に置(をか)ず
同所(をなしところ)にて浴(ゆあみ)せず物(もの)を受取 渡(わたす)
事も手より手へ直(ちか) ̄ニ せず夜行(よるゆく)
時(とき)は必(かならす)燭(ともしび)を燈(ともし)て行へし他人(たにん)
は言(いう)に及(をよば)ず夫婦(ふうふ)兄弟(きやうだへ) ̄ニ而 も
別(べつ)を正(たゞしく)すへしと也 今時(いまとき)の民(みん)
家(か)は此(この)様(やう)の法(ほふ)を知(し)らずして