← 前のページ
ページ 104 / 111
次のページ →
翻刻
社家云遊民の御かたつけなく新田を開きてすましめ給はゝ
古地あれにもならす本百姓の迷惑にも至らす山野もあれぬ
被成様おはしまさん御心たにあらは事はいか様にも調ゆき侍らん
武士云仏氏の害は山林を荒すのみニて御座候はんや社家
云いまた是より甚しき事あり天地万物は人を以尊しとす人
は心を以尊しとす此故に聖人の政は人心を正くするを以て
先とす人心正しき時は天地の気順にして国治天下平
也心くらく道邪にして生んよりは死せるを増れりとす然るに
今時仏氏の教ほと人心をくらまし政道をあしくする者はなし唐
にても如此なりて頓て仏道衰微したり今日本も仏法の亡ひ近き
にあり天下の政道多くは仏法に同心なれは仏法の亡ひさまに
天下も又乱れなん事のみ歎侍り国家の政教の本たる人心をは
諸宗を分ちて仏者に預け給ひ人心の崩るゝか如く悪く也
行をも知しめさす此故に天に変あり地に災ありてさとし
給ふ事たへす仏法の亡ひんとする前表を少しかたりて聞せ
可申今時勝れて仏信心の人を見給へ大身小身貴賎
男女に至るまて悪人ニてなきはなし其仏を作り堂塔寺を
たて僧に物を多くやる処より見て仏に迷ひたる者は信心
あつき人也後世願とて誉れ共其者の平生の実みれは百姓
をしほり取水籠に入木馬にのせ妻子をうらせ重代の田畠
を放させ病者なる者は病つき或は死す百姓の泣の涙を
あつめて仏に供し後生に助からんといふ其外下人に情なく