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語論するにたらす我その実話を語ん為来れり抑人皇四十四代
元正天皇霊亀二年丁巳かしこに樵夫あり薪を売て父を養ふに
父酒を嗜む常に一ツの瓢を腰にして酒を沽て父にあたへ柴を山
にとるに滑石を踏て足を失して顛【たおれ】る乃酒の香あり出る処の水
を試に飲に則酒也瓢に貯て父に餽【おく】る後に国人奏聞す勅有
て其滝を養老と名付天子行幸霊亀を改元して年号を養
老といふと古今著聞及十訓抄にも見えたり雄略帝の頃其事
有事曽て旧記実録には見えす又本巣郡にあらす万葉集に云
美濃国多藝のかり宮にて大伴東人のよめる歌一種〽昔より人
人のいひくる老人の若ゆてふ水そ名におふ滝(タギ)の瀬 同集におなし詞書
にて大伴家持〽田跡(タド)川の滝の清みか昔よりみやづかへけんたぎのゝ
のうへに 顕朝家の千首に権少僧都其覚〽三野のゝたぎのゝ上に宮ゐ
せし跡に流れて滝そ残れる 是らの歌をもて本巣の郡にあらさる事
を知へし其のみにあらす続日本記にも当耆(タギノ)郡 当伎(タギ)ノ郡なと書り又羪
老元年九月同二年二月行幸の事も載す勅使の事はいつれの書にも
見あたらず思ふに元正帝を混雑して樵夫を源丞内と名付元来
此国に本巣ノ郡あり所の名を鷲巣といふなどにもどつきて附会
するのみ養老の謡にも其誤をしらす本巣郡といひ雄略天皇といふ
併縁起謡何れか先に作り誤りけん凡謡曲は物を和らけはかなき事を
作なせる物成に文盲成ものはひたすら信する也縁起には母といひ古
書には父といふ謡には父母と有か様の相違は少しも苦しからすたゝ本巣
鷲白山なと附会するのみ《割書:中略|》又菊水の高きに流るゝといふ事其理り
【右頁書込み】
《割書:謡ニ曰|山路の労にや》
《割書:此水をむすひ|てのめは労も》
《割書:助りと作れり|是■■ものは》
《割書:取にたらねと|是らは又甘》
《割書:んしとす|》
《割書:万|一 首(クサ)と有》
《割書:種いかゝや|可考》
《割書:此歌万に|いにしへゆと》【「万」は「万葉集」】
《割書:有|》
【左頁の書込み】
《割書:源義人云|もとすの郡》
《割書:は前にいふ|藍染川》
《割書:の辺りなる|本洲の事》
《割書:ならん芦|のすも又》
《割書:ゆかり有て|聞ゆ》
《割書:宇佐宮の|神高津師》
《割書:いはく| きく水は水を匊するといふ事也此水至て清く六月の暑日に野老樵夫のきくて呑勿論也菊にあらす》