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素盞烏尊に起れるにや松尾の神を祭る謂なし又酒を三輪
といふいにしへ言あれは杉の葉を軒に建るや可尋之稲葉山の
梺岐阜てふ街によき酒あり其外栗笠の瀧津瀬篠塚
の養老酒皆〻甘き泉也されは酒を好むものは李白を愛し
て床ニ掛置《割書:中略|》下野国二荒山の北十里あまり過て山中村と云
所あり奥羽への往還路也家数百三十もあらん五穀実のらず
漸栗稗のみ岩間に植て是を食事とす四季山野に狩して
獣禽をとりて食む常に濁り酒を飲事也此所の土人は牛頭
天王を奉(マツ)る也酒を醸る家並なれはかく有へき筈也《割書:下略|》
當藝ノ行宮の古跡養老の瀧の谷に隣て天神山ありこは天神の
祠ます有也其社内に岩間をそゝく清水のいと清き流あり
菊水といふほとりに菊の千種もなし土人伝へて美泉とし又漢国
のためしを引て菊の水とさへいひはやしぬ誤まれることの甚しとや
いはん世〻の歌書正史に見えす正しく是は仮みやの跡ならむ
其故は万葉集の歌にも多藝野ゝ上に宮ゐせし趣あり
且清水あり抑旧都の跡を尋るに必水をみるへき事なれは
此行宮もなとかよき水をいにしへ用ひ給はてや有へき御饌
に備へ給ふか上田跡山の水は老を養ふゑにしもあれはなど
宣ひて菊の水とめて給ひしやとまれかくまれ多藝のかり宮
ゐの御跡は此天神の森の中也国〳〵の行宮の跡に十か
九ツ其所の人崇めまつりて斧鍬なとの■【昔?】なけれは後世諸
神を勧請して終に其御神の御社の森のやうになれる
【右頁書込み】
《割書:按ニ烏尊手奈津足奈津智ニ|命シテ酒ヲ|造ラシムト|アレハイヨ〳〵|此命ニ起レ|リヤ故ニ酒|ヲカミスル|ト云モ神ノ|スルコトナレハ|ナリ》
醸《割書:訓|カミス》
《割書:又| カモス》