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給ふへき忠節も有かたし儒者抔いふ者は時処位の至善を
しらて唐流を其侭に述いへは今の時に合ず日本の所に
応せす此国の人の位にあたらす何を以聞し召入給はんや日
本の上代は無為の化行はれて政刑の見るへきなし只神を祭る
の礼に孝を尽し給ひて篤恭【とっきょう】にして天下平也神道者は
其祭記の跡のみ見て其故をしらす公家は王道衰たる時より
の事を記し闇主の例のみ引人情に遠き事南蛮人に国
政を論せしむるかことし仏者は身過の謀後生の迷ひのみ
にて天下存亡の機のみにかゝる事は夢にもしらす其外の貴
賎老若の天下の政道を悔み我知顔のものゝ言はしろき
いのこを世になきものとし古きはうきをたからとしたるたく
ひにて井の内の蛙の大海を不知かことし君臣共に耳を傾けて
聞しめせ共訳もなき事共のみなれはあき玉ひてとはんともお
ほさぬと見え侍り天下にある物は皆 公方様の物にておは
しませは天下の人も 公方様の人也何そ天下の人の知のみ
公方様の知にあらさらんや申上る者も 公方様の人也えら
はせ給ふ御知も 公方様の御知也申所は天下の人にあれ共
えらはせ玉ふ所は君と老臣とにあり上の知明らかならて其
万言の中の善をえらひ出させ玉ふへきか武士云今の時に
当ていかなる事か平治の功に当り可申哉上にも御取用可被成
候や社家云下の情を申上る者なけれは委しく知しめさぬ也
申上たらは必おとろき玉ひ御用可被成実事あり語て聞せ