← 前のページ
ページ 97 / 111
次のページ →
翻刻
居なからの売買は皆米遣ひと成へし旅立ものゝ金銀少し持行
へきのみ也武士云近年の間に飢饉ゆかん事は右の御法ニて
救はれ可申候へ共山の如此荒たるはニ三十年の間には中〳〵
目に見ゆる程はえ申間敷候川〻も砂石のとまり候程には
二三十年の内には成申間敷候坊主の堂塔こそ止申候共
此天下の大勢の者の用る程は跡からはゆる事あらし然は
十年にて極まる物廿年に延可申迄の事ならむか社家云
如此ニて候へ共天下の山林十か八尽候へは十年か廿年の間にかゝ
りて世乱可申積也今から政を以此乗する算をおさへ
よきに置たて被成候へははや只今より天運かはり申候往と来る
との違ひ也今の如くニて乗しゆかは今よりして十年の山の
あれは今より前卅年に当るへし其後乱世と成なは卅年治世十年
に当るへし又九に至て変しても乱世卅年程の残りの算あり
今政を以てなをれは六十年のもとりあり其内廿年は生する
よりもきる算多かるへし又廿年は切よりも生する算多かるへし
六十年には山〻三分二茂るへし九十年には大かた昔にかへるへし
本の草木のからみつよくなれは川〻次第に深く成也君
子は業をはしめ統をたれてつかしむへき事をする也武家
初まりての賢代日本の中興と成へけれは名を後世に上給ひ
て目出度ためし成へし 武士云かく天下の貴賎の普く用る
材木薪をたゝ坊主のみ山林を尽すとは申かたからん歟
社家云大樹大名大臣士庶の五等の人倫は天下に有へき