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【一行目前頁】
へと成にけりうら嶋むねうちさはきこはいか
なることやらんといひけれは内より八十あまりの
おきな立出て此あたりにてはみなれぬ御すかた
かないかなる人にてわたらせ給ふそと申けれは此
所のうら嶋は何方に居給ふそととひけれはおきな
申やう御身いかなる人なれは浦嶋の行衛を
尋給ふそや其うら嶋とやらん申侍るははや
七百年さきのことゝ申侍て候と申けれはこ
はいかなることやらんとて大きにおとろきなく
〳〵そのいはれをかたりけれはおきなもふし
きのおもひをなし涙をなかし申けるはあれに
みえて候草たかき中のふるきつかこそその
ひとのつかと申侍てこそ候へとてゆひをさし
てをしへける其とき浦嶋太郎は草ふかく
露しけき野へを分ゐりてふるきつかに
まゐりなく〳〵かくなん
たらちねにあはんと思ひきてみれは苔むす塚と成にける哉
かりそめに出にし跡を今みれはとらふす野へと成そ悲しき
扨浦嶋は一本の松のかけにてやすらひてあきれはてゝそ居たりける