翻刻
ちやうちんを照らして小屋の外面を見廻り又
狼の難を恐れ鉄砲を放し苦患忘るゝ隙
なく早くも東雲告る鳥の声のみ待わひ帯
紐解きて安心に眠る事にはいつなる事と
譬仮宅小屋掛けなりとも又もや町並に家の
建連なる事もあるへきか御回向なりとて
遠国を隔てゝ参詣の旅人幾千人市町に命を
失ひぬれは此上誰ありてか遠国を隔てゝ参詣す
へきともおもはれす人気の騒たつ事も日を経ば
落附くへし落付く時はかならすしも
ひそまりかへりて雨降る日晴たる夜るはもの
淋しく猥りに出あるきする事有へからす
たゞ此上の成行を悲歎する事安からす自滅の心地
実に誠誰ありてか苦患をまぬかるへしや
幸一此書をなす事前 にもしるせるか
如く年月を経て誰か此変災を覚え
居て其詳なる事を語るへき只子孫打寄
咄し伝への種にもなさん事をほ?りす我は
素ゟ書も不読絵の事抔は尚更に
人形の首たに書たる事なし只是程の