翻刻
大災を子孫に伝へんの本意なれは
始めて絵の真似したるそのつたなき
筆の運ひや絵の具の事文章とても
左の如く行届かされは長〳〵しく
本末たにもつゝまらす因ておもひ出せる
大概を左に記し後の慰に残すなれは
善不善を見ゆるし給へ退屈なすへき
長文句をも能こそ書れと一笑して
他人の誹をなし給ふ事なかれ
爰に亦川中嶋の噺しを聞に何れも田舎の
村〻なれは町家と違ひ凡の家には五ツ時を過にし
頃は打臥てありける所に大地震発し大に破損
夥敷皆〳〵打驚庭に出て騒動なす時に
小堰小川等に一切水なし定て地震にて震ひ
こわせしものにやと其評義連〳〵也然る処に
犀川の瀬音もなしされど此騒動に取紛て知ら
さりけるを誰聞留めけるにや瀬鳴の音の絶てなき
事をいふ又恐怖して皆〳〵ひそまつて聢と是
を案するに極めて瀬音のなきに評決しいかにせん