翻刻
やすからすあきれ果てそ居たりけるいつしか
夜もほの〳〵と明け行侭に少しは心に喜ひて
己れか村〻打見やれは地震の大破は見
ゆれともいまた水災はあらされは少しは
安堵なすといへとも次第に明け行程社【こそ】何れ
打詠れは是いかに朝夕目馴てさへおそろしき
あら浪の大河干揚り一滴の水ある事なし
わつかの少堰に塵芥のとまり夕立の強く
降たるさへ水かさ増りて路次を損ひ道行
き脳む事さへもありけるをかゝる大河の
何ゆゑにいかなれは止まりぬるやまたは
地割れて流水の世界の底に落入ぬるか
実否をしらされは恐怖する事なほ増りて
たゝ〳〵あきれはてたるより外に思案はな
かりけり折しも時の移りけれとも人と成
たるは苦心に腹のへりたるも打忘れたれ
とも幼少の者は其弁ひなくものほしけなる
有さまなり子を見る事親にしかづ爰に
おいておもひ〳〵に談交して老人
女小児をは此所に残し置壮年にして