翻刻
むる事終に二十有余日の日を重ね語事も聞もおそ
ろしく古今未曾有の大変也
爰に亦山中新町にては二十四日の夜の大災にて
家蔵物置夥敷震ひ潰し人〻何事の所為
なるか其よしたに知らさる者多く或は圧死
或は怪我人も多かりけるに眼たゝく間に出
火となりぬれは狼狽歎く程もなく岩倉山の
大山崩れ水増逆流れし家蔵浮み出し
彼の岩倉山崩れて水のたゝひたる所に流れ行て
幾数しらぬ家蔵家財其夜の中央に度〻迫りして
ありけれとも暫時に湖水にもひとしき程の形を
来ておそろしけれは誰ありてか船もて是を返し
得ん事もなりかたく掛る大河を止めぬる事
二十有余の日を重ねたれは水かさ増る事
言語に述かたく是かために人民牛馬焼亡水
死の差別もわからす死骸爰にあらされは
血流の悲歎亦格外なり辺りの山〳〵に逃
去り野宿すれとも大河の湛水日夜に満〳〵
次第に広こりたれは一時〳〵に高き方に逃
去り苦痛する事数日なり前代未聞の大災を