翻刻
衣の袖たにも乍去動く形もなけれは
眉を顰め奇異の思ひをなして
凡人なれは其日をそ送りける爰に二十
四日の夜大地震を発して斯大災を
受る事の恐ろしさよといへり其程を
手寄もとめて問ひけるに善光寺
を中はに取らは酉戌亥の方に当
る所の山野取わけて夥しといふ
疑ふらくは大地震発する所の気地
中に満〳〵てもれたるにも有けるや大
災の後改暦戊申の春を迎ふと
いへとも松城より辰巳にかけ戸倉坂
木辺の山続に至り何所とも無く山
野に徹へ鳴音ある事是亦陰陽
遅速の所為に寄る斯前代未
聞の大地震を発する程の順逆に