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棟木にて押潰されうせぬるよし誠にや
水戸の御家にてハ前の中納言の君の
ふかくたのミ覚されし藤田虎之輔戸田
銀次郎も死失ぬ虎之輔ハはしめ難なく
のかれ出しかと老たる母刀自のあとに残り
しをおもひいて引かえし救出さんとして
軒の下に失果つと其国の人より聞ぬ此
国の儒者なる會津恒三の教子にて長
門の人に赤川淡水といへるものありしか
其物かたりに虎之輔の母ハいと雄々しき
老女にて我子なから日頃ハ物の用にも
立へきものよなとたのもしくおもひつるに
其甲斐もあらて深くたのまれ奉りし
君をおき翌をもしらぬ老の身のため
あたら命を棟のもとに捨たりし不覚さ
よとむつかりしよりこの母ありて此子とや
かゝる事をやなとゝ諸ともに語り合たりし
小石川より南のかたニてハ小川町ハ西俎板橋
より東猿楽町まてなこりなくやけうせ国つ
守の邸くつれたるハ青山土井酒井松平
讃州淀稲葉土屋伊東小出なとの御家々
にして松平駿州堀田備州松平豊州板倉
榊原内藤なとなこりなく燒失たり
讃州の御家に徒士の士廿人あまりも同し