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たれは聲さへ得いてさりしに娘ハもの云
ことのおのれほとにかたくハあらさりけん爰に
そと聲かるゝ計こたえしかハ俄に多く
の人のこゑ立騒くさまして此火きやしなハ
救出さんするほとに心強く思ひてよと云聲
の猶はるかなる方にのミ聞へしか出てゝ見
れは隣なる家より火いてたりしを瓦
の下にうつもれゐしかハなとかたりける
か実にさなりけんと人〳〵と語合たりし
御城の内にてハ紅葉山にすへ奉りし世々の
御霊屋ハ更なりむかしよりおさめおかせられつる
くさ〳〵の御寶こむるぬりこめをはしめとして
櫓石垣まて数を尽して崩れ落内腰
かけよりも火出てたり
其夜 将軍家も御小性【ママ】只ひとり召具し
玉ひ御玄関まていてられし折しも内藤
紀州のミ御供も具し玉ハす装たになく
してかけつけ玉ひ當直し居つる徒士
のやから廿人あまりと守護し奉り楓山まて
退せ玉ひしに百人番所もくつれおち
黒鍬てふもの九十七人しにうせつるよし
又見附ニての石垣ハわれさるところもなく
護持院原の石垣なと堀の中にしき
ならせしめてくつれ落つるよし