← 前のページ
ページ 83 / 104
次のページ →
翻刻
御座のかたハらにすへ玉ひたりし文箱の
上に棟木落てければ筐ハくたけつれと
ふミにて支たりし程に御身は恙なく
まし〳〵けれと御内人ハ三十八人失ひ玉ひ
ぬこの夜麻布の里なる御下やしきに
退かせ玉ふにともし火たに持せ玉ねと御馬
にめされたれはかゝる中にもやんことなき
御方とはしらさりしかと會津の御家ニ而ハ
馬三十六疋失ひ玉ひしかは御のきにも
こよなくあやしかりしよし又北条の御家とか
きゝし若君其夜妻迎玉ふことのありしかハ
媒の君をはしめとしてよめ君まてあへなく
しにうせ玉ひしなとかたるものもありき誠なら
ましかはいと浅ましき事ニなん
日本橋通りははしより南のかたほといよ〳〵はけ
しくて南伝馬町鍛冶丁五郎兵衛町を始として
東西の川岸より京はしまてやけうせ芝井丁
もまたやけたり其中にいと哀れなりしは
さきつとし品川洋に夷ふせく料として
新たに築玉ひてける砲臺の中に會
津の御家にて請玉ハり玉ひしてころハ土の
そこ割やしけんと思ふ斗ニ鳴はためき厳
しく立つらねつる小屋倒るヽまておしかたふき
戸も窓もひらかねはとやせましからやせましと