← 前のページ
ページ 87 / 104
次のページ →
翻刻
あらねと街のかす五千七百あまり宮居寺は
凡六千二百余り塗籠の数十一萬四千五百余り
国つ守の御やしき四百あまり御旗本の方々より
輕きものまて其家居十八萬五千八百あまりある
は崩れ或はやけうせて死うせたるもの
十壱萬八千六百人あやまちせしもの三十二萬六
十人あまりと公けヘ訴出しかともあるハ外つ
国よりのほり来しものあるはいつこのものとも
さためぬものゝ死失たるなと数ひなハ二十萬にも
あまりぬべしいまにして其夜のさまおもひ出るに
老たるを呼おさなきをたつね神を念し佛を
唱るハさてしもいはすむな木におしたほされ瓦に
しかれうめきくるしむ其上に炎にまかれ
烟りにむせひいとくるしけになき叫ふ聲身
にしミて哀れともいたましとも得いふへくも
あらぬに吉原の里に名たヽる遊め某よとて
紅井の打かけ着て白き脛の処〳〵より血流るヽ
をすあしにて泣まとへるそれの処の殿よとて
太刀も佩玉ハて鞍も置ぬ馬に尾筒立髪
所々やけのこりたるに打またかり玉ひたる
ふとくたくましけなるおのこの柱のもとに
打しかれ目のたま飛出死失たるあてやかなる
女房のをさな子の手をにきりもろ共に瓦の許に
打たほされ歯を喰しはり息絶たる見るに