翻刻
御留になりし事
大神の御心に叶ひ給はさりしか其節京都の大地震
今更いはすともよく世の人のしれるかことく也けりされは
その琵琶に御修復加へられて黄金や何やものさはに
添給ひて返し納め玉ひし其御礼代に両国造殿ゟ
吾師学のなりし中村文大夫守臣大人に命くたりて玉造の花仙山
より玉堀出さしめ給ひて奉られし時其玉にそへて
奉られし守臣大人の歌
出雲の神宝の中に紫藤もて造れりし琵琶ちふ物
の有けるを
朝廷にめさけ玉ひて看そなはして其琵琶に修理加へて
黄金やなにや物さはにそへ玉ひて返し玉ひけるその
よろこひに奉る物を求めて奉れとおふせかゝふりし
時よめる
大君のみことかしこみかへりことまをしきこえむゐや
しろと国の宝をみつかひにさゝけまたさす物しろを
まき出さねと掛巻は綾に畏し大殿よ命くたれは
おほけなき我身の幸と梓弓いそしみ立て石上古き
例しを思ひいてゝ玉造らしし玉の祖の神の命の
幸のしつまりましし里ぬちに花仙と名に