翻刻!草双紙の世界

コレクション: @chinjuさんと読む草双紙

怪談御伽童 5巻. [2] - 翻刻

怪談御伽童 5巻. [2] - ページ 11

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に彼(かの)士(わむらひ)は加役(かやく)申つけられ何かといとまなく暫(しばらく)は 此 沙汰(さた)は止(や)みぬされは横(よこ)さまの金子むさぼり忽(たちまち)富(ふう) 貴(き)なる門(かど)は鬼(おに)是(これ)をにくみ且(かつ)天道(てんとう)はみてるを昃(かく)断(ことはり) なれは其年の夏(なつ)の末(すへ)に五平次がなす事大小に よらず仕合あしく博奕(ばくゑき)の術(しゆつ)も運尽(うんつき)ぬる時は思ふ 図(づ)にあたらすたくはへし金銀 勝負(せうぶ)の賭(ため)にとられ 残(のこ)るは資財(しざい)田畑(でんばた)のみにてありしを是もいく程なく売(うり) 代(しろ)なし其金子さへ尽果(つきはて)たりわづか三年の間 盛衰(せいすい) 手のうら返(かへ)せりかゝりしかば毎度(まいと)口入せし金子とて ありもあられぬもの迄(まて)〆高(しめたか)にして都合(つがう)金高 十五両の書付浪人方へ持参し催促(さいそく)きびしく毎日(まいにち) 来りて乞(こひ)けれは一旦は申 延(のべ)置(おき)ぬれど一 銭(せん)の心当 なくされど打捨(うちすて)置(おく)べきにも言訳(いひわけ)なし妻子(さいし) ̄ニ 向(むかひ)ひ申 けるは五平次方より一たび恩(おん)に成たる金子 返弁(へんへん) せずしては武士(ぶし)たゝず左文字(さもじ)の刀(かたな)売なば価(あたひ)心 やすく立(たつ)べけれ共 他(た)へ渡(わた)しては先祖(せんぞ)へ不孝(ふこう)且(かつ)又(また) 我(わが)手にかけたるものゝ魂(たましひ)しる事あらばいとゝ恨(うらみ) 深(ふか)かるべし此(この)刀(かたな)は一 命(めい)にかへても放(はな)すべからず難義(なんぎ) を救(すく)ふ一つの孝行(かう〳〵)と思ひ傾城(けいせい)の勤(つとめ)奉公(ほうこう)して五平次 方へ金子をつくのひくれよと落涙(らくるい)して語(かた)りけ