翻刻!草双紙の世界

コレクション: @chinjuさんと読む草双紙

怪談御伽童 5巻. [2] - 翻刻

怪談御伽童 5巻. [2] - ページ 12

ページ: 12

翻刻

れば母はとかうのいらへもなくうつふしに伏(ふし)て泣(なく) のみなるに娘(むすめ)は顔色(がんしよく)常(つね)のごとく悲しき体(てい)をも見せ ず五平次が此年月 情(なさけ)なふつらかりしを思へは逢(あい) そめしむかしうらめしく身(み)を捨(すて)成とも此金返し なんと思ひつめて孝(こう)の為(ため)に命(いのち)をも捨(すつ)るならひま してや勤奉公(つとめほうこう)せん事は年の限(かぎ)りあれは別(わか)れても又 父母に廻(めぐ)り逢(あわ)んをたのしみに暮(くらさ)んはいとやすき事よと 心よくこたへけれはおとなしくこう〳〵なる娘か詞(ことば)を 聞(きく)にも浪人 夫婦(ふうふ)はたゝ涙(なみだ)のみにむせび居(い)たりしが 果(はて)しなきなげきと明(あき)らめて五平次を呼(よ)び借用(しやくよう) 金返弁致すべき了簡(りやうけん)なし娘を売(うり)て身の代を以て 返済(へんさい)申たし一両日の中娘 同道(どう〳〵)し江戸へ罷出申たし 願はしからぬ事なから敵(かたき)持(もち)たる身(み)は今日出て明日 は斗(はかり)がたし殊(こと)に諸家(しよけ)集(あつま)れる幕府(ばくふ)の御 城下(じやうか)不(ふ) 意(ゐ)に出合 討(うた)れなんも斗(はかり)かたし若(もし)もの事あらは金 子は娘がかたより請取らるべし娘が在付(ありつき)の方は母 がもとへ申越べしといふ五平次以之外いかり行末(ゆくすへ) 知らぬ浪人の内室(ないしつ)斗(はかり)り残(のこ)され江戸へ御越しとは承(うけ給は) れと何方(いづかた)へ立退(たちのか)れんもしらず金子請取候迄は 他国(たこく)へ御 越(こし)候事中〳〵叶(かな)ひ不_レ申御 息女(そくじよ)を勤奉(つとめほう)