翻刻
なかれのすへに柵(しからみ)もうき【?】
と書て又ながしやりぬかくて下部(しもべ)ともあまた
尋(たづ)ね来(きた)りあやしや何の見所もなき谷(たに)川に心
をよせ給ふこそはかなけれかゝる所には狐(きつね)なと有
て人の心を迷(まよ)はすなれと口々いふにてげにと
思ひても立(たち)さりがたく瑟々(しつ〳〵)たる波(なみ)西施(せいし)が顔色(がんしよく)
今いづくにかあると高(たか)らかに云(いひ)勝(まさ)らかして帰(かへ)り
ぬとかくするに年(とし)もかへりて睦月(むつき)になのゝは事【??】
多く物思ひも少し勝(まさ)れぬへし花 盛(さかり)の頃(ころ)
より何かと取 急(いそ)ぎ卯(う)月四日に同国津山
より妻(つま)をむかへ入たり名(な)をしがとなん云(いひ)ける
婚礼式(こんれいしき)終(をわ)りて寝(ね)やに入て男(をとこ)はさよが事に
打(うち)そへて過し頃 谷(たに)川にてひろひ取し木(こ)の葉(は)
のぬし恋(こひ)しくて此女の事は心にもいらねは
世の掟(おきて)斗の妻(さい)となして置(をく)べしと心を定(さだめ)て妻(さい)
に向(むか)ひいふやうかくいはばあやしやいかなりてな
すにと心もとなく思ひたまはんが千々(ちゞ)の神(かみ)かけ
てそこをよそふ思ふにはあらず我身(わがみ)事十三
の歳(とし)君(きみ)へ召(めし)出され寵愛(てうあひ)他(た)にこへ厚(あつ)き御
恩(をん)は身(み)に余(あま)りぬある折(をり)から御たはふれに