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汝(なんじ)三十にならん迄は妻愛(さいあい)なすべからすこの御
言(こと)の葉(は)身(み)にしみてかたしけなくも有(あり)がたく
かしこまりて御 受(うけ)申ぬしかるに三四年此 郡代(ぐんだい)
に仰(おふせ)付られ母も■らもにころふ【???】ありて君(きみ)の御
前(ぜん)へ出(いつ)る事もなく只(たゞ)遠(とを)く思ひ上奉るのみ也
誠(まこと)に深(ふか)き御 情(なさけ)のあまりにひとり寝(ね)のつれ〴〵
迄を思しめし下され妻(さい)を迎(むかひ)取 得(ゑ)させよと
母かもとを度々(たひ〳〵)仰(をゝせ)下されしを母は何(なに)のあや
をもしらで出入人々に似合(にあわ)しきえにしもあ
らばと頼(たのも)しふ幸(さいわい)にそこを迎(むかへ)とらんとあるを
母に向(むか)ひ此 理(ことは)りものへかたくてよし此うへは
迎入てはその人に此事をあからさまにいい聞
せんになどか心得(こゝろへ)たる人きと思ひてむかへし也
此事ゆめ〳〵いつわりならす下紐(したひも)こそはとかずとも
いもせのちぎりふかき事を思ひとりて幾久(いくひさ)に
かたらはんをたのしみにわが年の三十にみつるを
待(まち)給はるへしとしみ〴〵とくどくにそ女もさのい
気疎(きやうと)き様(やう)にもあらで実(げに)世(よ)は思ふに甲斐(かゐ)なき
ものにてこそおはすれともかくも御心にしたがひ
さふらはんといらへけれは主水(もんと)も思ひの外に