翻刻
清朝人吃煙図(せいてうじんたばこをすふづ)
《割書:竹煙管(たけきせる)を把(とる)は下官(げくわん)なり》
《割書:左(さ)の図(づ)は清商(あきなひたうじん)阿片煙(あへんたばこ)を吸(す)ふ状(やうす)なり阿片(あへん)を交(まじ)へたるたぼこを短炮(みちかきき)|管(せる)に盛(も)り灯火(あぶらひ)にて吸(すひ)つけ臥床(とこ)に臥(ふ)して心(こゝろ)を鎮(しづ)め吃(す)ひ服(ふく)すること|一炷香(せんかういつほんたつ)の間(あいだ)尤(もつとも)其(その)廻(まわ)りを囲(かこ)ひ人を払(はら)ひ閑(ものしづか)にして二三ふくも吸(す)ふなりそれ|より起(を)き出(いづ)れば睡眠(ねむけ)を催(もよほ)すことなく徹夜(よもすがら)の作業(てわざ)も出来(でき)るとなりこれは|夥長(ホイヂヤン)とて船中(せんちゆう)案針(ほうばり)の役(やく)を勤(つと)め昼夜(ちうや)風侯(かざあひ)方位(はうがく)等(たう)を弁(べん)することを主(つかさと)る|人のなす所(ところ)なり但(たゞ)一度(ひとたび)此法(このはう)を用(もち)ひ卒(にはか)に止(とゞむ)るときは其身(そのみ)に害(かい)ありとて上陸(しやうりく)の|後(のち)旅館(りよくわん)に在(ある)の間(あいだ)も折(をり)〳〵これを薫(かをらし)服(ふく)することなり長崎(ながさき)の荒木氏(あらきうぢ)目(ま)のあたり|見(み)しを図(づ)して贈(おく)れり》
《割書:按(あん)するに印度(てんぢく)地方(ちはう)にては阿片(あへん)一味(いちみ)を薫服(くんふく)する風習(ならはし)あり吸(す)ひて後(のち)暫(しば)|時(し)昏憒(くら〳〵)すといへども服(のみし)後(あと)は精神(きぶん)快爽(はつきりとなり)通夜(つうや)眠(ねふり)を催(もよほ)すことなくこゝろ|もちよく遠行(とほみち)なども随意(きまゝ)にして其輩(そのともがら)楽(たの)しむこと限(かぎ)りなしとぞ|大人(うし)の紀聞(きゝがき)せるものあり瓜哇(ジヤワノ)人俗-好 ̄テ啖(クラフ)_二阿片 ̄ヲ_一不 ̄レハ_レ至_二昏酔 ̄ニ_一則 ̄チ不_レ已(ヤマ)と|白石先生の著書(ちよしよ)に見えしもこれなるべし此 阿片煙(あへんたばこ)も彼(かれ)より伝(つた)へし|転法(てんはう)なるべし《割書:毘婆沙律(びばさりづ)に陀婆闍(たばしや)は煙薬(えんやく)也 陸地(りくち)に生す四分律(しぶんりつ)に比丘(びく)風を患(うれ)ふ煙筒(えんとう)を作(つくり)て煙(えん)を用ふ其ほか煙(えん)を嗅(かぎ)て|疾(やまひ)を治すること見ゆこは今の煙草(たばこ)とはことなるべし若(もし)阿片(あへん)の類にはあらすや但(たゞし)外の薫薬(くんやく)にや後の考(かうがへ)をまつ》》