翻刻
【右丁】
おひにかけ付(つけ)れどもはや鎮(しづ)まりし跡(あと)なれば家蔵(いへくら)堂社(どうしや)の軍兵達(ぐんぴやうたち)が
手疵(てきず)破損(はそん)をいたわりて介抱(かいはう)修復(しゆふく)致(いた)しける是(これ)によって市中方(しちうがた)一(いっ)
統(とう)に心(こゝろ)を落付(おちつけ)始(はし)めて我(われ)にかへりたる思(おも)ひをなし皆(みな)太平(たいへい)を呼(とな)へける
然(さ)れどもかゝるぶつそうなる折(をり)なれば鯰(なまづ)や火事(くわじ)の残党(ざんとう)ども若(もし)
あちこちに隠(かく)れ忍(しの)びて不意(ふい)に起(おこ)らば一大事(いちだいじ)と七日(なのか)か間(あいだ)焼原(やけはら)に
野陣(のぢん)をはり篝(かゞり)を焚(たい)て寒夜(かんや)を凌(しの)ぎ火(ひ)の元(もと)身(み)の元(もと)厳重(げんぢう)にかまへ
けるに日数(ひかず)を経(へ)ても難(なん)なければ人々(ひと〴〵)野陣(のぢん)を引(ひき)はらひ我(わが)城廓(じやうくわく)に
引籠(ひきこも)れば鹿島(かしま)愛宕(あたご)両神(りやうじん)も末社(まつしや)の神(かみ)をひきつれて鎮座(ちんざ)
の社(やしろ)へ御帰陣(ごきぢん)あり四海(しかい)の浪(なみ)もおだやかに万代不易(ばんだいふゑき)千秋楽(せんしうらく)揺(ゆるが)ぬ
御代(みよ)ぞめでたけれめでたし〳〵〳〵
地 太平記《割書:終》
【左丁】
青(あを)
海(うな)
原(はら)
津(つ)
浪軍記(なみぐんき)