翻刻!地震・災害史料

コレクション: NDL地震・火山

安政大地震畧記 全 - 翻刻

安政大地震畧記 全 - ページ 9

ページ: 9

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【右丁】 鯰太平記混雑噺(なまづたいへいきどさくさばなし)        市中隠士        大道散人戯作 地(ち)に居(ゐ)て乱(らん)を忘(わす)れずとかや爰(ここ)に八万 奈落(ならく)のぬし鯰(なまづ)ぬら九 郎(らう) 水底(みなそこ)の揺高(ゆれたか)といへる者(もの)おのれが強力無双(がうりきぶそう)なるに慢(ほこ)り家蔵(いへくら)堂社(どうしや) をおびやかし人命(じんめい)をそこね天道(てんとう)に逆(そむ)くことたび〳〵なればそのむかし 鹿島太神(かしまだいじん)経津主尊(ふつぬしのみこと)天照(あまてらす)おん神(かみ)の勅(ちょく)を蒙(かふむ)りはせ向(むかつ)て生捕(いけどり)給ひ 土(つち)の獄舎(こくや)に押埋(おしうづめ)てかんじん要(かなめ)の磐石(ばんじやく)をおさへとし是(これ)を征(せい)し給ひしかば ゆるがぬ御代(みよ)と栄(さか)えけるに時(とき)なるかな天(てん)なる哉(かな)頃(ころ)は安政(あんせい)二年の初冬(はつふゆ)八百(やほ) 万(よろづ)の神々(かみ〴〵)先(さき)をあらそひ出雲(いづも)の国(くに)へ出陣(しゅつぢん)ありし御留守(おるす)こそ幸(さいはひ)なれ時(とき)こそ 来(きた)れと揺高(ゆりたか)は忽(たちまち)に逆意(ぎやくい)を震(ふる)ひ謀叛(むほん)の色(いろ)を顕(あら)はしつゝ会文(くわいぶん) 【左丁】 をもて味方(みかた)を招(まね)くに兼(かね)て期(ご)したる一味(いちみ)のめん〳〵先(まづ)一番(いちばん)に馳来(はせきた)るは 飛火野隼太家焼(とびひのはやたいへやき)。その火のもえ出(だ)しには。火(ひ)おどしの鎧(よろひ)にさしこの兜(かぶと) 頭巾(づきん)をいたヾき。火柱(ひばしら)の指物(さしもの)膝栗毛(ひざくりげ)の弥二馬(やじうま)にもへたつ計(ばか)りなる 紅(くれなゐ)の厚総(あつぶさ)かけ火勢(くわせい)盛(さか)んに馳加(はせくは)はる二番には雷語路(かみなりごろ)五 郎(らう)音高(おとたか) 二本 角(づの)の前立(まへだて)打(うつ)たりける兜(かぶと)に夕立おどしの鎧(よろひ)稲妻(いなづま)の太刀(たち)に虎(とら)の皮(かは)の 尻鞘(しりさや)がけ黒雲(くろくも)の小間(こま)にまたがり一ㇳ ぶち打(うつ)て馳加(はせくは)はる第三番には伊豆(いづの) 国の住人(ぢうにん)突浪冠者(つなみのかんじゃ)。出水(でみづ)の太郎を始(はじめ)として異類(いるい)異形(いぎやう)の魔生(ましやう)のめん〳〵 我(われ)おとらじとよりこぞれは惣大将(そうだいしやう)鯰(なまづ)の揺高(ゆれたか)はいち〳〵に手配(てはづ)を定め海手(うみて)の 方(かた)へは突浪(つなみ)出水(でみづ)を伏勢(ふせぜい)とし五七の雨六ッ八ッの風を相図(あいづ)として火事(くわじ)雷(かみなり) を前後(ぜんご)に備(そな)へ鯰(なまづ)は自身(じしん)真(まつ)さきにすゝんでぐら〳〵としてゆり出すその