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にげけるを。のがさじとおひければ。/朱雀門(しゅしやくもん)の方へはしり。わき
之門へ入て。/式部省(しきぶしやう)の/築地(ついぢ)をこえんとするを。学士とびかゝりて
成村が足のきびすを/沓(くつ)ながらひしと取。成村ひきはなち
て築地をこしけるに。取たる所/沓(くつ)と共に/刀(かたな)にて/切(きり)たるやうに。
ひきちぎりたり成村築地の内に立て足を見れば。きびす
きれ/血(ち)はしりて。さらにとゞまらねども。あまりのおそろし
さに。はう〳〵/宿所(しゆくしよ)へそ/逃(にげ)かへりける。/投(なげ)られたる相撲は/死(しに)
入たりければ。/板(いた)にのせてもちかへりけり。此/強力(げうりき)の学士いづ
れぞと。たづねられけれども。ついに其人しれざりける。
/宇治拾遺(うぢしうゐ)に見へたり
/成村恒世(なりむらつねよ)相撲の事
後一條帝の御宇。相撲の節ありて/抜出(ぬきで)の日/左方(さほう)の/最手(ほて)
/真髪成村(まがみのなりむら)。右方の/最手海恒世(ほてうみのつねよ)をめしあはせらる。成村は/陸(む)
/奥(つ)の相撲なり。たけ高く力つよし。恒世は/丹後(たんご)のすまふなり、
たけは成村よりはひきかはしかとも/力(ちから)はおとらず。すぐれたる
/上手(じやうず)なり。成村/頭(づ)を恒世がむねにつけて。つよくおしくるを恒
世引よせてのけさまになぐれば。成村うしろにたふれ恒世其上
にぞころびける。二人ともに身をつよくうちたるにや。しばしは