← 前のページ
ページ 39 / 136
次のページ →
翻刻
おきあがらざりけるが。成村ははう〳〵/起(おき)あがり。相撲部屋へ入けり
衣/襖(はかま)きて。人に手をひかれてかへりけり。恒世は
をき/得(ゑ)ずしてふしければ。右の方の相撲どもよつてかき
あげて。/弓場殿(ゆばどの)の方へ持ゆき。/殿上人(てんじやうびと)の/居(ゐ)たる所に/置(おき)たりける。
各々よつて恒世に成村はいかゞありつるぞと問へば。/只牛(たゞうし)の
ごとしとばかりこたへける。それより相撲殿へつれゆけば。各々
/衣服(ゐふく)金銀をあたへられければ。かたはらに山のごとくにつみあげ
たり。恒世はいとくるしげに此/賜物(たまもの)を見もやらずして居たる
を其国につれ下るに。/播磨(はりま)の国にてむなしくなる。成村
に/胸背(むねせふ)をさしおられけりとぞ聞えし
/日田永季出雲鬼童(ひだのながすへいづもおにわらは)相撲の事
人皇七十一代/後三條院(ごさんでういん)の御宇に/豊後国日田郡(ぶんごのくにひだこほり)に/日田鬼(ひたおに)太夫
/大蔵永季(おほくらながすゑ)といふものあり。/先祖(せんぞ)をきはめるに。/神武天皇(じんむてんわう)の御宇に
/善憧鬼(ぜんとうき)といふ人/紀州大蔵谷(きしうおほくらたに)といふ所より/鬼武(おにたけ)。/武内(たけうち)。/武下(たけした)。以下
の/家人(けにん)をぐし豊後国日田郡にくだり/戸山(とやま)といふ所に/住(ぢう)す。大
蔵谷より出たるゆへに/子孫(しそん)大蔵を以て/姓(せい)とす。其/未葉(まつよう)に/妙(めう)
/憧鬼(どうき)といふものあり。/後(のち)に/日田鬼蔵(ひだのおにくら)太夫/永弘(ながひろ)とあらたむ。/強力無(かうりきむ)
/双(そう)なり。/背(せ)に一尺二寸の/毛生(けはへ)たり白鳳(はくほう)年中の人なり。夫より/数代(すうだい)