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を/経(へ)て/永季(ながすへ)にいたれり。永季其/生(うま)れつき。たゞにあらす
長八尺にあまり力のかぎりはしる人なし。/強力(かうりき)のほまれ/都鄙(とひ)に
かくれなかりしかば。/延久(ゑんきう)三年。十六才にて相撲の/節会(せちゑ)に召れて
上洛す。此とき/出雲(いつもの)国に/希代(きだい)の/力者(りきしや)あり。/畿内(きない)より/関八州(くはんはつし)四国
中国に/廻(めく)りて相撲を取に。/片手(かたて)におよぶものなしと。/風聞(ふうぶん)
あるによりて。是も召れて上洛すへく聞へける。是によつて永
季伊勢大神宮に/祈願(きぐはん)し。/神馬(じんめ)七疋を奉る。かくて上洛の時
/筑前太宰府(ちくぜんだざいふ)に/至(き)るに。ひとりの/童女(どうにょ)にゆきあふ。童女永季
にむかつて/汝(なんぢ)此度/禁裏(きんり)におゐて。/古今絶倫(ここんぜつりん)の大力にあふべし。
其たけ/常(つね)の人よりはひきく。/惣身鉄(そうしんてつ)にしてちから/無量(むりやう)なり。
これにかたん事人力におよびかたしといへども。/勝利(しやうり)を/得(う)へる子
細あり。其故はかの/童(わらは)が母。日本第一の/力者(りきしや)をうましめたまへと
/諸神(しよじん)に/祈(いの)り/懐妊(くはいにん)の始より/鉄砂(てつすな)をくらふ故。うまるゝ子強力なり。
されども母。/炎熱(えんねつ)にくるしみひとつの/甜瓜(まくわ)をくらいしかば。童が
/頭(こうへ)のうへにとゞまつて。方三寸の/肉(にく)となれり。相撲の/節(せち)にのぞん
で/乾(いぬい)の方をうかゞうべし。われ/汝(なんじ)に/方便(ほうへん)を/示(しめす)べしと。いひ/終(おはり)て
とびさりぬ。永季此/奇特(きとく)を/感(かん)じ。天満宮にまうでて/無二(むに)の
/丹誠(たんぜい)をぬきんで/奉幣(ほうへい)し。今度の相撲に/勝利(しやうり)を/得(ゑ)せしめ