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給はず。其比ひとりの相撲あり。/極(きはめ)て/強力(げうりき)にてすぐれたる上手
なり。此相撲が/得(ゑ)たるには。相手の/腹(はら)にかしらを入てかならず/袂(くじり)
まろがしければ。/腹袂(はらくじり)とぞよびけり。伊通公腹袂をひそかに/呼(よび)
よせて。我子の中納言相撲をこのむがにくきに。くじりまろば
かせたらば。ほうびをとらすべしと。仰ふくめられて後。中納言
に/足下(そつか)相撲をこのめるに。腹くじりと/勝負(しやうぶ)すべし。/勝(かち)たらば
我とゞむる事有べからず。/負(まけ)たらんにおゐては。ながく相撲を/止(やむ)
べしと有ければ。中納言かしこまり候とて立向ひ。腹くじりが
好むまゝに身をまかせられければ。悦てくじり入にけり。其後
中納言/腹袂(はらくじり)かよつつぢを取。力にまかせてひかれければ。かし
らもおるゝばかりにおほへうつぶしにたふれけり。伊通公は興さ
めて立給ひければ腹くじりは其座より/逃(にげ)うせけり。それよりし
て相撲のせいしなかりけり。古今著聞集に出たり。
/小熊伊成弘光(こぐまこれなりひろみつ)と相撲の事
人皇八十二代/鳥羽院(とばのいん)の御宇に。/帥大納言長実卿(そつのたいなごんながざねきやう)のもとへ尾張国
の者に小熊/権頭伊遠(ごんおかみこれとを)といふ相撲。其子/伊成(これなり)を/具(ぐ)して参り
ければ。酒をいだしてすゝめらるゝ所に弘光といふ相撲又きたり
けるを。/召(めし)くはへてさかずきたび〳〵めぐりて後。弘光/酔狂(すいきやう)のあ