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まりに。/長実(ながざね)卿に向ひて。むかしの相撲は勝負について/昇進(しやうしん)をも
仕りしかば。/朋輩(ほうばい)口をふさぎ。/世(よ)の人これをゆるしき。近代はせい
など大きになり候へば。左右なく/最手(ほて)をも給はり/脇(わき)にも/立(たち)候也。
いさみなき世にて候と申す。伊遠此こと/葉(は)を聞とかめ少し
居なをり。是はひとへに伊成が事を申たる候なり。/不肖(ふしやう)の身/今(こん)度
最手のわきをゆるされぬ。まことに申さるゝ所のがれがたし。/但(たゞし)
すこしこゝろみられんやといへば。弘光うちわらひて。たゞ道理
のおす所をいふばかりなり。こゝろみられんはさいわいなりとて。
左の手をいたしてこひけるを伊成かしこまりて父か/景色(けしき)を
伺ひしかば。/伊遠弘(これとをひろ)光かやうに申すうへは。こゝろみ候へといふ時
伊成弘光が出せる手をひしとにぎる。弘光引ぬかんとしけれ
ども。うごかざりければ。たはぶれにもてなして。かやうの手合は
さのみこそ候へ勝負これによるべきにあらず。いて一さしつ
かまつらんといひて。ふたつの袖をひきちがへ/袴(はかま)のくゝり高く
かゞげて庭に出てこれへ下り候へ〳〵といふ伊成も庭におり
てぞ向ひけり。/形体勇力金剛力士(ぎやうたいゆうりきこんがうりきし)のあらはれたるかとあやまりた
る。弘光もまた/敵対(てきたい)にはぢず見へにけり。/亭主(ていしゆ)を始め諸人
目をおどろかし。ざくめきて見る所に伊成すゝみよりて弘