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【右丁】
婚姻式其他之式法を掲ぐるに先づ水嶋卜也
及又市之妄を弁ぜざるを得ず依て聊左に付
記し併せて三儀一統之事を弁ず
世上に諸礼を指南するもの皆小笠原流と名のり小
笠原を諸礼家之如く思ふものあれども然らず小笠
原は元信濃の国の大名にて弓馬之家也室町将軍之
御師範也弓馬之事は小笠原を本とす其他の諸礼事
は小笠原家之私之家法也将軍之家法を伝へたるに
あらず然るに小笠原の一流広く世にひろまる其元
を尋ぬれば小笠原左京大夫貞慶が其家臣小池甚之
亟【注】貞成に家法を伝へたるに貞成主人より伝授を得
【左丁】
たりといひ多く弟子をあつむ其弟子之又弟子に水
嶋伝左衛門元也といふものあり後に卜也と号すこ
の水嶋卜也といふ浪人小笠原流と名のり小笠原家
になき事をこしらへ指南す是より水嶋が弟子之又
弟子に至る迄各自思ひ〳〵に古実になき作り事をこ
しらへ之を世にひろむふしぎにも江戸は専らこれ
を用ゆる事とはなれり試に小笠原流之諸礼者と名の
る者に付てたゞすに答ふる所皆一様ならず又人に
指南するを見るにこれも亦一様ならず小笠原流伝
書などゝ記したる書物を見るにこれも亦一様なら
ずいづれも古実を失ひたる作り事多し或時我先代伊
【注 「亟」は「丞」の誤ヵ】