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翻刻
【右丁】
この小袖は婚礼之当日聟君之方より姫君へ遣す紅白之小
袖也これを陰陽之小袖ともいふ是を台にのせるには衽を
合せてのせ上へのし包を添べしこの小袖の袖は折かへさ
ぬもの也是に樽肴などをそへて輿入之刻限より已前に遣
すべし姫君へ御目にかける事は聟君之方と申合せ持参之
小袖と同時に披露すこれは年寄之役なり持出る役は中老
か小姓衆たるべし小袖其外積物之大略は第三巻之奥に示
す
樽は柳樽を用ゆ柳之木はやはらかき木にて水気にあへ
ば木ふくれ酒もらざるゆへ古は専ら柳之木を用ゐし也
当今はひの木。さはらの木などにて作るといへども婚姻
【左丁】
之時はひの木樽と言ずして柳樽といふべし柳樽といふ
に伝あり
うち枝とは金銀を打のべて作りたる橘之枝などをいふ
古書にうちおきと記しあるはこのうち枝之事也これは
小袖などのおさへに用るものなり
送小袖之事
是は姫君持参之小袖也唐櫃に入れ列之内に持さるゝ事古
実なり当今は是を七種之音物といふ小袖其他之品は聟君
之位に相当するものを用ゆべし七種に限らず九種にても
これを七種之音物といふ也唐櫃之ゆたんは織物或は絹。木
綿。色は勝色などを用ゆこれには尤家之定紋を付るもの也