翻刻
【右丁】
【上段】
冥々とはくらき□いふ也人生れて後
についに学文をせざれは其心くらく
してよる行が如く万にあやまちあり
【下段】
《振り仮名:人生而不_レ学|ひとうまれてまなばざれは》 《振り仮名:冥々如_二夜行_一|めい〳〵としてよるゆくかごとし》
【上段】
金玉をは愚者は貴むといへ共是は誠の
たからにあらす善人は諸人をよく治て
安くするゆへに是誠に国の宝なり
【下段】
《振り仮名:金玉非_二実宝_一|きんぎよくはじつのたからにあらず》 《振り仮名:以_二善人_一為_レ宝|ぜんにんをもつてたからとす》
【上段】
その心くらくして理にまどふ事ありても
師にしたがひて問さればそのまどひつい
に解る事なしゆへによく師にとふべし
【下段】
《振り仮名:惑而不_レ従_レ師|まどひてしにしたがわざれば》 《振り仮名:其惑卒不_レ解|そのまどひついにとけず》
【上段】
土つもりては山となり学文の功をつみ
ては聖人となる也聖人にさへ安くなるを
以それより下の賢人には猶成と知るべし
【下段】
《振り仮名:土積則為_レ山|つちつんではすなはちやまとなる》 《振り仮名:学積則成_レ聖|がくつみてはすなはちせいとなる》
【上段】
婦に教るにははしめて来れる時によく
教ゆべし子に教るには狭き門によく
教ゆへし後は教をまもらぬもの也
【下段】
《振り仮名:教【レ点脱】婦便初来|ふにをしゆるはすなはちしよらい》 《振り仮名:教_レ子便嬰孩|こにをしゆ□はすなはちゑいがい》
【上段】
子をよくあわれむ人は杖をもつて打
事多し子に美食ばかりあたふるは子の
ためにあた也是則子をにくむがことし
【下段】
《振り仮名:憐_レ子多与_レ杖|こをあわれまばおゝくつえをあたへよ》 《振り仮名:憎_レ子多与_レ食|こをにくまばおゝくしよくをあたへよ》
【上段】
三年の内一人学ばんより三年の内
よく師をたつねて一日学ぶべしと也三
年の独学よりもはかゆくとの事也
【下段】
《振り仮名:三歳与_二勤学_一|さんねんつとめまなばんよりは》 《振り仮名:三歳可_レ択_レ師|さんねんしをゑらふべし》
【上段】
千日の内一人学びてもしれぬ事はしれ
ぬ也一日明かなる師にあひぬれはおゝ
くの事を問てしるなり
【下段】
《振り仮名:千日与_二勤学_一|せんにちつとめまなばんよりは》 《振り仮名:一日貴_二明師_一|いちにちのめいしをたつとめ》
【左丁】
【上段】
独まなびて学の友なき時はひとり
立にしてよき理を聞事すくなし
ゆへにその智あがりがたし
【下段】
《振り仮名:独学無_レ友則|ひとりまなんでともなきときは》 《振り仮名:孤陋而寡_レ聞|ころうにしてきく[こ]とすくなし》
【上段】
目にて人の非を見出さんとする人は
人を誹(ソシル)者也口にて人の短智(タンチ)短才なる
事のみを語るはわざわひの本也
【下段】
《振り仮名:目莫_レ視_二他非_一|めにはたのひをみることなかれ》 《振り仮名:口莫_レ談_二他短_一|くちにはたのたんをかたることなかれ》
【上段】
耳にて悪き声を聞ぬれば己が志を乱す
也心に貪欲(トンヨク)をさかんにし又は嗔恚(シンイ)を
起しぬれは身に災(ワサワイ)をうくるなり
【下段】
《振り仮名:耳莫_レ聞_二悪声_一|みゝにあくせいをきくことなかれ》 《振り仮名:心莫_レ恣_二貪嗔_一|こゝろにとんじんをほしいまゝにすることなかれ》
【上段】
身はあしき友にしたがはざれは悪事を
する事なし口に益(ヱキ)なき事をいわざれ
ば己が徳行も正しくなる也
【下段】
《振り仮名:身莫_レ随_二悪伴_一|みはあくはんにしたがふことなかれ》 《振り仮名:無益言莫_レ出|むやくのことばをいだすことなかれ》
【上段】
益なき事をせざる人は必善をつと
むる者也義を先として行ひ利 欲(ヨク)
の事を次とするは誠の道なり
【下段】
《振り仮名:無益事莫_レ為|むやくのことをすることなかれ》 《振り仮名:莫_二後_レ義先_一_レ利|ぎをのちにしりをさきんずる事なかれ》
【上段】
正(タヽ)しからぬ君に事(ツカ)へれば吾も心なら
ず悪行をするもの也正しからぬ民を
つかへばその君も悪名を取事おゝし
【下段】
《振り仮名:非_二其君_一莫_レ事|そのきみにあらずんばつかふまつることなかれ》 《振り仮名:非_二其民_一莫_レ使|そのたみにあらずんばつかふことなかれ》
【上段】
親は天地の徳を具(ソナ)へたり故に愚也とも
子は恐れ従(シタカ)ふべし賎しきものにても
夫にするからは妻はしたがふへし
【下段】
《振り仮名:親愚而子恐|おやはぐにしてもこはおそれよ》 《振り仮名:夫賎而妻随|おつとはいやしくともつまはしたがへ》
【上段】
一字の師のためには舌をぬくべし況や
数(ス)年の師をや又一日の主君のためには
命を捨る事あり□□退(シリノ)く事なかれ
【下段】
《振り仮名:一字師抜_レ舌|いちじのしにはしたをぬけ》 《振り仮名:一日君捨_レ命|いちにちのきみにはいのちをすて□》