翻刻
【右丁】
熟(むま)し取出(とりいだ)して食(しよく)すれば糧(かて)の助(たすけ)になるもの也。但(たゞ)し右
蒸籠(せんらふ)にて蒸(むせ)ばよろしけれども。蒸籠(せんらふ)なくんばわら
にてむすべし
○総論(そうろん)
右 品々(しな〳〵)の糧(かて)飯(めし)粥(かゆ)団子(だんご)饅頭(まんぢう)など。製(せい)しなれざる
人々(ひと〴〵)は。かやうに手数(てかづ)のいる事をせんより。やはり常(つね)の
飯(めし)を焚(たき)食(しよく)するが利方(りかた)なりと嘲(あざけ)る人もあるべけれ共(ども)
右の食物(しよくもつ)をこしらへ家々(いへ〳〵)に食(しよく)すれは日々(にち〳〵)の米の入(いり)やう
少(すくな)く自然(おのづから)米価(こめのね)引下(ひきさが)り世上(せじやう)おたやかになるべきなれば
【右丁左下枠外】天保二十四
【左丁】
少(すこ)しの手間(てま)をいとはす麤食(そしい)を食(しよく)し倹約(けんやく)を専(もつはら)にし
米価(こめねだん)下直(げじき)になるべき時(とき)を待(まち)玉ふべし。仮令(たとへ)米価(こめのね)賤(やす)
き時(とき)なりとも。此書(このふみ)によりて麤飯(そはん)を平日(つね〴〵)に食(しよく)する時は
無病(むびやう)壮健(そうけん)にして筋骨(きんこつ)衰(おとろ)へず私財(しざい)自然(おのづから)余(あま)り有(あり)
て親属(しんぞく)朋友(ほうゆう)の危急(ききう)をも救(すく)ひ。陰徳(いんとく)の陽報(ようほう)家(いへ)に
環(めぐ)り来(き)て子孫(しそん)繁昌(はんしやう)のもとひを開(ひら)き。且(かつ)は凶年(きやうねん)の
しのきに心(むね)を痛(いた)めず。旅(たひ)他国(たこく)をなしても遠国(ゑんご)扁土(へんど)の
麤食(そしい)に困(くる)しまず。誠(まこと)に生涯(しうがい)身(み)の安逸(あんいつ)をもとむるは
平素(つね)に麤食(そしよく)するに有(あり)。依(よつ)て此書(このしよ)も安逸伝(あんいつでん)と号(がう)する也
【左丁枠下】平井店 松兵衛 所持