翻刻
ものあぢのひもの。又或ときは。上の仕合にて。志越
かつをのたぐひばかり成におやさまにはむまれま
させゐふ事のめでたさよ。是と申も貧乏神(びんぼうがみ)の
きしゆへ成べし。此上はいよ〳〵御ゆだんなく。御/工夫(くふう)
なされ候へと申ければ。木斎まかせよ合点(がつてん)なりさり
ながら。少もとでを入べきとて。ある日しまひものゝ
たるへ行。儒書仏書(じゆしよぶつしよ)の端本(はぼん)。歌書(かしよ)又はうたひまい。くさ
ぞうしまでとりあつめ。きれそんじたるにもかまはず
ふる反古(不んご)よりも下直(げじき)に。夥敷(おびたゞしく)もとめ。四壁(しへき)に
棚(たな)を津りて上置(あげおく)時。知(しる)人の来りて是は沢山(たくさん)なる御
書物や前々(まへ〳〵)終(つい)に見てる事侍らぬがと申ければ。木
斎われ若年(しやくねん)の時より/書籍(しよしやく)等をすき。連ん〳〵にもと
免しも有。又/親(おや)のゆづりたるも侍るが。近年(きんねん)火事
志げきゆへ。去方の土蔵(どぞう)に願入おきしが。先にて
蔵(くら)の。ふしん有とのことはりにて。かへさるにより。取
よせしが。所せきてきのどくなりと申さるゝ。彼客(かのきやく)
きゝて座(ざ)を立(たち)。書物(しよもつ)共を見てあれば。さま〳〵の
そうしまで。打(うち)まじりて見へし程に。是はいかなる
故に。くさそうしまで。とりませたまふと云ければ
わがおや歌学(かがく)をもすきうたひまひもこのみし
故。さま〳〵のほんも候也。われ又/家業(かげう)の外。儒仏(じゆぶつい)
歌書(かしよ)もすきし故。何やらかやら候べしと申さるれは