翻刻
はいなる物躰(もつたい)らしき者(もの)のうそは。あれかうそか有
べきかと。思ふもの物なれハ十人か八九人は。誑(ばか)さるゝ物じや
あらふ事のと申さるればいづみやきゝてふかくかん
じ。御物かたりの内(うち)に。酒もはやさめて候。御/咄(はな)しを
さかなにて。今(いま)一つくたされん。御さかつきこなたへと
乞(こい)うけて。四五はいつけて。ひつかけさらは御おさめ
なされ候へとて。木斎(不くさい)へかへせは。木斎もたぶ〳〵と
ひきうけ〳〵。三/盃(はい)のめば。いづみやは御いとま申さら
はとて。我屋をさして帰りけり
木斎咄醫者評判(不くさいはなしいしやひやうばん) 三
第九 山伏(やまぶし)と醫者證據(いしや志やうこ)くらべの事
跡(あと)よ里/乞(こい)にせめくるはかけ
かくて木斎。此/年(とし)月いしやを勤(つとめ)て。此度(このたひ)初て。かゝる
大分の/薬代(やくだい)取事。薬師如来(やくしによらい)の御加/護(ご)成べし。これ
よりしだひはりにつのらば。福貴(不くき)と成。後には家(いへ)
屋敷(やしき)をも求(もと)め。七珍万に(しつちんはんぼう)にあきみちなん。しからば
目玉(めたま)之助をもよろしく取たてとらせんと。心よげ
に申さるれば。目玉之介申やう。大旦那(おふだんな)さまより此かた。
かやうなる御/仕合(しやわせ)は終(つゐ)に見申たる事なし。銭(ぜに)百
文の薬代(やくだい)さへ世にも▢れなる事にて。或時(あるとき)は