翻刻
れしは。御いしやさまの。御日待之候/伽(とき)申こそ/幸(さいわい)なれ
白人(しろふと)のとくしん仕度事共を。今夜(こんや)のなぐさみに
尋申侍らん。先いしやの上手とはいかやうなるを申
べきや。木斎こたへていわく。上古のやうなる神医(しんい)
徳医明医(とくいめいい)など。今は有べしともおもわれず
今の世の上手と云は。一には生徳(しやうとく)の才(さい)の/働(はたらき)。二には
いがく三には病人に/精(せい)を出す人。問には薬に念
を入る人。五には多欲(たよく)ならぬ人。六には慈悲(じひ)有人。
右六の徳有人を上手と云べし。先/生徳(しやうとく)の才(さい)
なくては。何と学(がく)あり精(せい)を出し念を入。慈悲有
ても。療治(りやうぢ)が働(はたら)くまじ医(い)学なくは本がくぢけて
何と利発(りはつ)にても。精(せい)を出しても。療治(りやうぢ)が無理(むり)にて
心ならず病人の害(がい)が多からん。第二と云べし。第一
とも申べし。病人に精を不_レ出は。才がはたらき。学(がく)
が有とも。病が癒(いへ)まじ。薬に念を入とは。製法(せいはう)を
内(うち)の者(もの)まかせにしては。鉄(てつ)を忌(いむ)ものも忌まじ。
上の薬もつかふまじ。多欲(たよく)にては病人の為に
成まじ。薬代取ばかりに眼が付ば。人によりて
精が出べし。尤薬にも。人参(にんじん)もつかふまじ慈悲(じひ)
の心なくては。何とよくても。病人の為によからし
わが手柄(てから)せんとて。見へぬ事をも人めも不(す)_レ渡(わたさ)無(む)
理(り)の療治が多かるべし。右六の徳(とく)有人を。よく