翻刻
合点して上手と思ひ頼みたまへ。但かやうにそろふたる
人はすくなからん。せめて汗牛充棟(かんぎうじうどう)の医(い)書は不(す)_レ見(み)共
書物を枕(まくら)にして。外の事はそさうにても。薬に念を
入病人に高下なく勤るを。其次の上手共云へし。加様
のいしやも。すくなきもの也。医(い)の道を心がけては少
の隙(ひま)もなきものを。外の事に隙を費(ついや)さば。不心/掛(かけ)
と知べしと申さるれば。きく人々上手のわけは得
心仕たり。下手はいかやうに心得仕らん。木斎云く下手
は問たまふにも不_レ及病を。ゑなをさぬ医者也/直(じき)に
みたては。われらこときの人と。すぐばけにいわるゝ
扨又/福医(ふくい)名(めい)医。時(じ)医。奸(かん)医と医書にも四つ挙(あげ)
たり。ふくいとは。前に云/運(うん)の能(よく)仕合のを云。時医と
名医(めいい)は其時にはやり。名は高くもてはやされても
医の道に疎(うとき)を。時医とも。名医共云と見へたり。
奸医(かんい)と云が一のくせもの也。人を誑(たぶら)かし自慢(じまん)を云
師(し)の名を売(うり)。薬方(やくはう)の自讃(じさん)をするを。医書(いしよ)にも
禁(いましめ)たり此/奸医(かんい)を狐医(こい)といわれし人有。誠に狐(きつね)が
人を誑(ばか)すを狐(こ)なりとしりたらば。誰(たれ)か誑(ば)かされん
狐(きつね)もさだめて。色々/意(こゝろ)を配(くば)り。縁(えん)をもとめて誑かす
べし彼(かの)狐いしやの人を誑すは。人和(にんくわ)をよく諂(へつら)ひ。人に
信(しん)じらるゝやうにして。ぢひ正ぢきを面(おもて)に見せ。そろり
〳〵とねらひありく内に。いかに下手(へた)にても。いしやな