翻刻
べし。三には初(はしめ)は人か珍敷(めづらしき)。療治(りやうぢ)もおほく頼めは。はや
るやうに見へても。したいに見ざめがして。療治(りやうぢ)
すくなさも。あらんと申さるれば。又政右衛門がいわく
妙薬(めうやく)と云も有事にや候。木斎/答(こたへ)て中々古人の
方。皆妙方也。今時の妙薬も。きかぬにはあらず成
程きく事也。先政右殿の。御/合点(かつてん)の道(みち)にて申べし
たとへば弓(ゆみ)の師匠(ししやう)が。八分の強弓(つよゆみ)にてよくあたる
とて。弟子(でし)に其弓をゆづらんに。弟子が力強(ちからつよ)き男な
らば。その弓にて自由(じゆう)に射(い)らるべしや。上手のまね
を下手がすれば。却而(かへつて)/害(がい)に成故に。丹渓先生(たんけいせんせい)は
和剤局(わざいきよく)方の妙薬を削(けづ)りたまふ。それも上手にて
つかへばつかはるゝと見へて。丹渓(たんけい)の高/弟(し)。載元禮(さいげんれい)は。削(けづり)
ゐふ局方(きよくはう)の妙方(みやうはう)をつかひ。丹渓の正義(しやうぎ)に叶(かな)ひゐふ
とぞ妙薬ばかりにてよくは。古人の大慈(たいじ)大/悲(ひ)の心
にて。妙方はかり教(おしへ)たまはゞ。手廻(てまはし)よからんに。機根(きこん)へ
らしの医学(いがく)せよとはのたまふまじ。古人も読(よみ)_二仲景(ちうけい)
之書_一執_二其法_一不_レ執_二其方_一といへり。又以_二古法_一治_二金病_一は
旧屋(きうをく)を挫(くぢき)て。新屋(しんをく)を作(つく)るがごとし共しめす。此座に
大工作右/居(い)らるゝが。古/家(いへ)を破(やぶ)り。作(つく)りなをすには
そのまゝ何とて作らるべきや。短(みじか)き木は継(つき)/足(たし)
長きは引切などして立ずは。家には成申まい
爰(こゝ)に近きたとへば。火は水にて消(け)すか正(しやう)