翻刻
たへがたかりければ。此よしを木斎に告(つぐ)るとき木
斎今こそよき時分也。貴所(きしよ)のきこん有/程(ほど)。御/内(ない)
義(ぎ)へ会合(くはいがう)あられ。候へよと申さるれば鴨左(かもざ)申は
中々此/節(せつ)。さやうの思ひ立。罷成べきやうにも侍
らずといへば。左のたまいそ。さはればおこるもの
ぞと。すゝめにまかせ。昼夜(ちうや)共に会合(くはいがう)するしたがひ
て。鴨左が寸白(すんばく)すきと治し。女ほうにうつりなやみ
けるを。又れいのからしをひたもの女房(にようばう)にたべさせ
ければ。寸白虫。得(ゑ)たりかしこしと。いつものくせに
なれて。きん玉ゑこもらんと。さがりし程に
たもつ袋(ふくろ)なければ。みな〳〵こと〳〵ぐ外(ほか)へくだり
さりて女房がなやみも。すきと治(ぢ)して。夫(ふう)婦ともに
無病(むびやう)そく才の身となり。よろこぶ事かぎりなし
さて木斎を。さま〳〵ちそうして返(かへ)し。追付返礼(ほつつけへんれい)
として八/王寺紬(わうじつむぎ)五たん。樽代(たるだい)五百疋。所て/炭(すみ)十/俵(ひやう)送
り礼状のおくに。一しゆの狂奇(きやうき)をよみたしける
年月(としつき)乃/寸白(すばく)の縄(なわ)をとかれつゝ。又/煩(わつらい)を。せんきてもなし
と有し程(ほど)に。木斎も返礼状(へんれいじやう)の折々に返歌
寸白故(すばくゆへ)。薬代(やくだい)金をしめられて。辛(から)き目(め)にあひ。やまい
治(ぢ)すらんと。かやうによみつかはしける。然る所に中(なか)
橋筋(ばしすじ)より人来る。何事やらんと問(とへ)ば川舟(かわふね)やの梶(かぢ)ゑ
もんと云福者(ふくしや)。近年(きんねん)ふら〳〵と煩(わつらい)付て歴々(れき〳〵)の