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れは。恩をしらざる方(かた)をば。そんとくよりは。ふくりうな
くてかなはねば。一度や二度は。仁道を出せども。度か重
なればすゝむまじ。其時をのれが無理(むり)をばた
なへ上て。いしやのとがと。わろくいふいしやの尻(しり)に。石(いし)
臼(うす)を結(ゆひ)付てくるやら。遅(おそし)といふ医/者(しや)もよろこぶ心
あれば呼(よば)ずとも見廻ふべし。薬(やく)代の倹約(けんやく)は。自(じ)
己(こ)の命(いのち)をちゞむる也古人も重/財軽身(ざいきやうしん)するは。一つ
の不治(ふじ)とのたまふいしやがこりては。手/並(なみ)を覚へ
て。かさねて病用にすゝまぬか。薬に品(しな)があらば
其▢ばかりにてもなく。其/家(いへ)之/妻子(さいし)共までの
為に成べし誰か捨身(しやしん)の業(げう)を。なすいしやはある
まじ。此わけいしやの口から云は。はづかしき事なれ共
何方(いつかた)の医者(いしや)之心も。能しりたるにより。是も病
家の為かたり申ぞとあれば。梶(かぢ)右きゝて。扨も〳〵
うちまけたる御はなし。御尤〳〵とぞんじける
第十一 病は気(き)より生(しやう)る事
療治(りやうじ)きてんの糸(いと)も賢(かしこし)
川舟(かわふね)屋の療治のしかけをきゝて。扨も作意(さくい)働(はたら)きた
るいしや殿かな。御目にかけ度病人候と。次田町水/果(くわ)
子(し)問屋の。福(ふく)右衛門方より。梶右衛門かたへ申こしけれ
ば。木斎にかくと云つたへて。則梶右同道にて参
り。病体(びやうたい)を見せければ。何共見わけがたく。只(たゞ)ぶら