翻刻!江戸の医療と養生

コレクション: コレクション4

木斎咄医者評判 5巻 - 翻刻

木斎咄医者評判 5巻 - ページ 73

ページ: 73

翻刻

爰(こゝ)に京橋辺(きやうばしへん)の事にや。とうがねやの茂兵衛と云町人 の子。十さいばかりなるが。何共しれず煩(わつらひ)付て後は人の 口まねをし。犬鷄(いぬにわとり)のなくまね。其外(そのほか)の鳥獣(とりけもの)のまね。牛 馬の吠いなゝくをも。のこさずまねけるが。初(はじめ)の程は それとも気のつかされは。只其まゝにて月日を 送りしが日数かさぬる内に。父母気かつきて此段 いしやにかたりていろ〳〵薬を用ひ。さま〳〵養性(やうじやう)し けれとも。おもりこそすれ験(けん)はなし。その比/名誉(めいよ)のは かせ安陪(あべ)の晴卜(せいぼく)を請(せう)して占(うら)をきくに。せいほく勘文(かんもん) をもつて申けるは是はいかさま鸚鵡(おふむ)の鳥の恨(うら)むる 事もや侍るらん。但覚へは御座なく候やといへば茂兵衛 手を打。われ六さいの比にや。我父鸚鵡(わがちゝおふむ)を。長(なが)崎にて もとめ秘蔵して飼(かい)けるが。或時いかゝ取まきるゝや。 預(あつか)りし下人/餌(ゑ)を飼(かふ)はで。うへ死(し)しけるをかぎりなく おしみけれともすべきやうなくて。人をほうむる ことくに跡(あと)をもとふらひし事を。我かすかに覚(おぼ)へ たり。扨はそれ故にて候かと申所へ。尾張(おはり)町太次兵衛 来かゝりて。是にはきねんきたうも可_レ然候。又煩 の事なれば。薬をもたやしゐひては。いかゝなり爰 に薮の木斎とて名/誉(よ)なる医者(いしや)候也。是へ見せら れまじきやと云けれは。それこそ望(のぞむ)所なれとて 太次兵衛を頼(たのみ)て呼(よび)迎。病人に逢(あわ)せければ。木斎