翻刻!江戸の医療と養生

コレクション: コレクション4

木斎咄医者評判 5巻 - 翻刻

木斎咄医者評判 5巻 - ページ 79

ページ: 79

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来りて。前の穴(あな)なし。如何(いか)がすべきと云ければ是を見 て。力(ちから)不(ず)_レ及(およば)と云ければ。泣々(なく〳〵)帰りにけり。後(のち)に秀成(ひでなり)是 を聞(きゝ)て。其(その)女/呼(よべ)とて。針(はり)の刀(かたな)にて皮(かわ)をさし切(きり)たりけ れば。尋常(よのつね)の女のやうに成てげり希有(けう)の事也と起 て有。今以同事ならずや。御心やすくおぼしめせ。さらば 療治(りやうじ)仕侍らんとて。かみそりをとぎすまして彼上皮(かのかみかわ)を 切さきければ。殊(こと)の外(ほか)血(ち)ばしりけるをやがて血とめを つけて。其後きんそうの療治にしかけ。かうやくなどは りて。食物等にて念(ねん)を入。養性(やうじやう)せし程に。やがてす きと平愈(へいゆ)す。父母よろこび。約束をたがへず。おてる を木斎の妻女(さいじよ)にたまはる。其上/家(いへ)屋敷/財宝雜具(ざいほうざうく) 家人/眷属(けんぞく)まて不(す)_レ残(のこら)譲(ゆづ)りわたさるれば。誠(まこと)に親 父(ぢ)竹斎には。木にたけをつきしごとく大にかはり。福 貴盤栄(きはんゑい)成けれは目玉之助も取立(とりたて)られ。今ははや 名をあらためて目の字(じ)をのけ。名字(みやうじ)をは家(いへ)名に 用ひて。薮(やぶ)屋の玉之助と申。大酒屋にぞ成にける。木斎 が祖父(おうち)祖母(うば)も。舅(しうと)の照井(てるい)夫(ふう)婦も。皆長命(みなちやうめい)にて楽仁(らくちん) となり。寺参(てらまいり)のみにてくらされける。木斎はいしやを やめて。仕廻(しもふ)ふた屋の徳(とく)左衛門とよばれ男/女(によ)の子共 おほくもちて。徳(とく)左百迄。おてる九十九迄のねがひも 叶(かな)ひ。寿命長久万歳楽(じゆみやうちやうきうまんさいらく)。目(め)出度かりける物かたりなり   元禄八年極月吉丑