翻刻
て。其後/娘(むすめ)のあらましをかたりければ。木斎つく〴〵と
きゝ。様子を見侍らば。何とぞ思案(しあん)も侍りなんと申
せば。恥(はづ)べきにもあらずとて。是を見せけるに。其な
りかたちは有て。うすやうの紙のことくにて。上/皮(かわ)ばかり
はりふさげて有。木斎とくと見て先その身の。容(よう)
顔美麗(がんびれい)なるに。ぬれこみければ何とぞすべき
やう有べきと。工夫(くふう)を費(つい)やして申やう。いかにも療(りやう)
治(じ)なるべき事に候。是/平愈(へいゆ)いたさせ侍らは。御/息女(そくじよ)
を我妻(わがつま)に給るべきやといへば。給にもおよはず
参らすべし。其上/外(ほか)に子も侍らねば。我一せき
をゆづり申さんとて。手形(てかた)を認(したゝめ)わたさるゝ。木斎御
侍(さふらい)の事なれば。なにしに御ことばのりがい申べきや
御/手形(てがた)にも及侍らぬと云ながらも以後の為(ため)と思ひ
手形を取て。ふところに押入(おしいれ)さておてるにむかひ
て申さるゝは。たとへばりやうじにて。つよくいたみ候とも
くやみたまふまじやとありし時。おてるどのいわさん
すは。かくあさましき因果(いんぐわ)にては。命ながらへても。ゑきな
くおもひ侍れば立所(たちところ)にうせはて候とも。少もうらみ
侍らず。いかやうになりとも。御心のまゝに。御りやうじなされ
くだされ候へとまことに余儀(よぎ)なく申さるれば。木斎き
かれて御尤の御事也。さりながら昔(むかし)もさるためし有/壒嚢(あいるふ)
鈔云医師采女正盛親(せういわくいしたねめのかみもりちか)が許(もと)へ。十七八ばかりなる女