翻刻
□□□つばをわり爰をせんと切むすふつね平何とかしたりけんうけ太刀になつてあやう□□
みゆる所へらうとう一人きたつてやすあきのこしのつかい【腰の番】をてうときるなむ三ほうとふりかへつ
てまつかう二つにきりわつたり又つね平と打あひしがやすあきうんのきはめかや太刀をと
ほくへ打こみぬかんとするまにつね平おどりあかつてちやうとうつなにかはもつてたまるべき五
十四才□一ご【一期】にてついにそこにてうたれけりあくゑもんしすましたりとよろこぶ所へ
やすあきのらうとう三谷のせんしはせ来るつね平こはかなはしとそのまゝそこを立
さりけりそのあとへ三谷のせんしあふいきついてかけ付此よしをみてなむ三ほうし
なしたり〳〵と【為成したりと=しくじったと】しう【主】のしがいを取かくしおのれあく右衛門めいづくまでかはのすべきとあと
をしとふて《割書:三重| 》おつかけたりさる程につねひらはよう〳〵とにけのひてもはや其日もく
れあなたこなたとまよひしかともしひかすかにみへけれはいそぎ立ゟいかに此やの
あるし我はみちにふみまよひたるもの成か跡成もりにてさんぞくにあひ只今是へお
つかけて来る也あはれかげをかくして給はれといふあるしの女房きくゟもいやさやうの人に
御やとはなりがたし其うへやいん【夜陰】のことなれはかなふましきと申もあへぬに三谷のせんしは
せ来り是もともしびをたゟに立ゟ人かけすとすかしてみてやあそれなるはかた
きにてはなきかといふやそのまゝきつてかゝれは心へたりとぬきあはせしはしか間き
りむすぶいほりの内にはやすなも女房もこはふしき成事やとみゝをすまして聞いたり□
にとる【かヵ】しけん三谷か太刀つばもとゟほつきとをれこはむねんとつつと【つっと=さっと】入てひつくみ大こんか
うりき【大金剛力(だいこんがうりき)】を出しゑいやつとくみふせたりされ共くひをかくべき打物なしゑゝ口おしやおのれ
ねちくひ【ねぢ首】にせんせられしと両方はかみをなしてときをうつすあく右衛門したゟ大おん上やあこ
れ成いほりに有し【あるじ】はなきか我こそかしう石川あく右衛門といふ物也さいせん申せしさんぞ
くきたつて只今わか命を取はあはれ出あひたすけたらは所りやうをのぞみににとら
せんきんこくにかくれなきあく右衛門をしらさるか出あへ〳〵とよはわつたりやすな此うへ
を聞ゟも是は天のあたへかやいで打とめんといふ女房聞てさらばみつからひをもつ
て出べき也其跡ゟねかいよつて思ふまゝに打給へ心へたりと女房をさきに立後に付て出
にける三谷のせんし是をみてやあなにものなれはさんぞくと思ひあやまちするな
我はしうのかたき打ぞといふやすなひのひかりにすかしてみてやあなんぢは三谷の
せんしにてはなきかしてそふいふは何ものぞ我はあべのやすなにてあるか扨しうの
かたきとはいかにせんしはつとおとろき扨きみにてましますかのふきやつめが大とのを
打申て候しやいはおつて申さんさあ是あそばされよやすなおふきくまでもなし
我身のかたきおやのかたきおぼへたるかとくびちうに打おとしまついほりにてやうす
をきかんいさ〳〵こなたへ〳〵と三人うちつれ入にけるふししう〳〵のきゑんよにめつらしく
もめくりあひ□かたきうちやとみなかんせぬものこそなりけれ
第三
それにんかいのせいすいしやうしやひつめつゑしやじやうり【会者定離】へし此しのたのもりにて
父をうしない其かたきを打取よのじんかうをふさがんためふるさとへもかへらずして女房
のなさけゆへかけをかくしていつみ成しのたのもりも程ちかきとあるざいけのと□□